DTM とは?
DTM( Desk Top Music )とは、パソコン上で音楽制作をすることを表す言葉です。
DTM を行うために最低限必要なものは、 パソコンとDAW ( Digital Audio Workstation )です。
DAW とは、音楽制作専門のソフトウェアの総称で、Logic pro や FL STUDIO、Cubase、Studio One など様々なメーカーから製品が発売されています。
詳しい内容を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
購入前に知っておきたいこと
パソコン選びの重要性
使用環境に見合わない低スペックのパソコンを選んでしまうと、動作が遅くなったり、時にはフリーズやブラックアウト(画面が真っ暗になる)、アプリの強制終了などの不具合が起きてしまい、作業がスムーズに進みません。
とはいっても、やみくもに高い機能を備えたパソコンを購入しても、自分の想定する作業内容よりもオーバースペックになってしまう可能性があります。
性能が高いパソコンは値段も比例して高額になるため、予算が限られている場合、正しい選択とは言えません。
パソコンの性能を左右する部分であるメモリやCPUなどは、後から変更することは一般的には難しいです。
そのため、後から変更ができない部分による動作不良が生じた場合は、パソコンを買い替えなくてはなりません。
パソコンは高い買い物なので、買い替えを避けるためにも慎重に選びましょう。
仕様する DAW のシステム条件
DAW をはじめとした様々なソフトウェアの公式ホームページには、システム条件が提示されています。
システム条件とは、ソフトウェアが動作するために最低限必要なスペックのことです。
システム条件には、以下のような情報が記載されています。
- 使用できるOSの種類とバージョン
- 必要なストレージの空き容量
- 推奨されるCPU
自分の使用したいDAWやソフトウェアがある場合、そのシステム条件を確認し、最低でもその条件をクリアしたパソコンを購入することが必要です。
システム条件を満たさないパソコンでは、ソフトウェアが動作しない可能性があります。
◆例
しかし、パソコンの用語を知らないと、システム条件の内容を理解することはなかなか難しいですよね。次の章で詳しく解説していきます。
パソコンのスペックを決める要素
CPU
CPU (Central Processing Unit)とは、様々な処理を司る装置で、パソコンの頭脳のような存在です。日本語では中央演算処理装置とも呼ばれています。
製品によってはプロセッサと記載されていることもありますが、プロセッサ= CPU と考えて問題ありません。
CPU の主な選択肢として、Intel 社、Apple 社 の製品が挙げられます。
Intel 社は「Core」というブランドが有名で、主に Windows に採用されています。
昔の Mac にも Intel 社の CPU が採用されていましたが、現在 Apple の公式ストアで販売されているパソコンは全て Apple silicon というブランドの「M シリーズ」チップ(※1)が採用されています。そのため、Mac を今から購入される方は必然的に M シリーズを選択することになります。
(※1)このモデルのチップは CPU を含む SoC と呼ばれるパソコンを動かすための役割を担うものなので、厳密にいえば CPU とはやや違いますが、ほぼ CPU と認識して問題ないです。
★同じブランドでもバリエーションがある
CPU は、同じブランドのものでも世代や型によって性能が違うので注意です。
Mac の場合、Mシリーズの中にはM1、M2、M3とバリエーションがあり、さらにそれぞれスタンダード、Pro、Max、Ultraと展開されています。
Intel の場合は CPU の型番から性能を確認することができます。
一般的に、シリーズが上位のモデルで、プロセッサナンバーの数が大きい程良い性能とされています。
ランクが高い製品でもプロセッサーナンバーが小さすぎると、あまり良い性能とは言えないので注意が必要です。
ストレージ
ストレージは、データを保存しておく場所です。
パソコンに内蔵されたストレージの容量で足りない場合は、外付けのストレージを USB などで追加することで容量を増やすことも可能です。
ストレージには主に HDD と SSD の2種類があります。HDD は比較的安価で大容量のデータ保存が可能ですが、読み書き速度は遅めです。
一方、SSD は高速な読み書き速度を誇り、アプリケーションの起動やデータの処理が迅速に行えますが、単価が高くなる傾向があります。
メモリ
メモリは、パソコンにおける一時的なデータや実行中の作業を保存する場所です。
CPU が直接ストレージにアクセスするよりもメモリへのアクセスが速く、これによって CPU の処理効率を高める役割を果たしています。
一部の製品ではRAM(Random Access Memory)と表記されることもありますが、RAM とメモリはほぼ同じ意味と考えて良いでしょう。
一般的に、ストレージが長期記憶型であるのに対し、メモリは短期記憶型として捉えることができます。
メモリの容量は、4GB、8GB、16GB、32GB、64GBなど、さまざまな選択肢があります。
★パソコン性能のイメージ
CPU =作業をする人、ストレージ=本棚、メモリ=作業机と置き換えています。
作業を行う人(CPU)の頭がよければ、高速に作業を処理することができます。しかし、作業台(メモリ)が狭ければ、その実力を活かしきれません。その逆もしかりです。
そのため、メモリと CPU はどちらかが優れているだけでは良さを発揮できないことが分かります。
また、ストレージ(本棚)があることにより、たくさんのデータを保管できます。
一方で、作業をする量が少ないのに作業台が広すぎたり、単純な作業しかしないのに IQ が高い人に作業をさせるのはもったいないですよね。
このような兼ね合いを視野に入れて、パソコンのスペック選びをすると良いでしょう。
その他選択基準
Mac or Windows (OS)
パソコンで使用される OS は、大きく分けてマイクロソフト社が提供する Windows か、Apple 社が提供する macOS があります。
簡単にいってしまうと、Windows 製品を買うか、Mac 製品を買うか、の違いです。
OS(オペレーティングシステム)とは、私たちがパソコンを使用するために必要なソフトウェアです。
OS があることによって、難しいコマンドなどを使用せずに私たちはコンピューターを使用することができます。
ノートパソコン or デスクトップ
ノートパソコンは比較的軽量で持ち運びが便利ですが、デスクトップに比べて価格が高めです。
一方、デスクトップパソコンは机の上に置いて使用するタイプで、基本的には持ち運びができません。その分、ノートパソコンよりもコストパフォーマンスが高く、性能も良い傾向にあります。
また、デスクトップパソコンは後から部品の交換やスペックの増強が比較的容易です。
【結論】DTM に必要なスペックまとめ
パソコンの性能を決める要素を知ったところで、どれくらいの性能のパソコンを選択すれば良いのでしょうか。
この章では、DTMに必要なスペックをまとめてお伝えいたします。
★前提
システム条件を満たしていれば、DAW を操作すること自体は可能です。
しかし、DTM と一口に言っても、作業内容は様々です。
プラグインを追加したり、楽器編成を増やすなど、CPU やメモリの使用量が多くなっていくと、システム条件を満たしているだけではカバーしきれなくなってきます。
ここでは、初めて DAW を使用するところから、一般的なお仕事を受けるレベルまでカバーできる、パソコンのスペックをご紹介いたします。
- CPU
Intel 社 の Corei5 以上の性能、もしくは Apple silicon の Mシリーズ を選択することがおすすめです。
MシリーズのM3 に関してはまだ新しいチップなので対応しきれていないプラグインもあるので注意です。
- ストレージ
内蔵ストレージは HDD よりも SSD の方が転送速度が早いのでおすすめです。
容量は最低でも512 GB〜1TB あると安心です。
- メモリ
最低でも16GB 以上を選択するのがオススメです。
8GB でも簡単な曲制作であれば可能です。
しかし、ボーカロイドなどの容量が大きいプラグインを使用すると、すぐオーバーロードになってしまうので、おすすめできません。
ちなみに筆者のパソコンは 16GB です。基本的には問題なく制作ができています。しかし、トラック数が多い楽曲になると、システムのオーバーロードで止まることがあります。余裕を持っておきたい方は 32GB をおすすめします。
- OS( Mac / Windows )
音楽制作で使用するソフトウェアのほとんどは Windows、macOS の両方で動作します。しかし、Apple 社が発売している DAW ソフトである Logic Pro は macOS でしか動作しないため、Logic Pro を使用したい方は Mac を選択しましょう。
また、ウィンドウズは Microsoft 社が作っている OS ですが、ハードウェアは別の会社が作っています。一方、Macは全て Apple 社が作っているという理由からMacをおすすめをする人もいます。
ノート or デスクトップ型か
普段の使用環境を考慮して、ノートパソコンかデスクトップ型かを選択しましょう。
ノートパソコンのメリットとしては、持ち運びができる点です。
例えば、バンドメンバーと共に曲作りをしていて、外出が多い、アイディアをその場で共有したり修正を加えたい方はノートパソコンが適しています。
一方で、デスクトップ型のメリットはノートパソコンより安価な点です。
コストパフォーマンスが良いのはデスクトップ型なので、家での作業しかしない方は、デスクトップ型を選択すると良いでしょう。
番外編:iPad ってどうなの?
「iPad で DTM はできないの?」とお考えの方もいるのではないでしょうか。
現在多くの DAW メーカーが、iPad 版に対応したアプリを販売しています。その中でも、筆者が iPad 用 Logic Pro を使用してみた感想を皆さんにシェアします。
結論として、「作曲は十分に可能だが、仕事のメイン機として使用するには厳しい」という感想です。
良い点として、iPad は Mac 製品の中ではパソコンよりも比較的安価で持ち運びも手軽な点が挙げられます。また Apple pencil が使えるので、楽器演奏者は楽譜をデータ化して書き込んだり、活用できる幅が広いです。
作曲以外にも iPad を使用したい人、また既に iPad を持っていている方は、まずは iPad 版の DAW を使用してみるのも良いでしょう。
一方で、iPad で使用できるプラグインや機材は増えてきてはいるものの、まだ互換性がないものが多いです。色々なジャンルを作ってみたい、本格的な楽曲作りを目指したいとお考えの方にとっては、後々物足りない部分が出てくるかもしれません。
まとめ
以上、今回はパソコン初心者の方へ向けて、DTM で使用するパソコンの選び方を以下の点からご紹介しました。
- CPU
- ストレージ
- メモリ
- OS(Mac / Windows)
- ノート or デスクトップ
まだパソコンを買う余裕がないという方は、今ある環境でできる限りのことをするのも一つの手です。
パソコンは高価な買い物なので、慎重に選択しましょう。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。