新人スタジオエンジニアのリアルなお仕事(2)| これを超えるものがあるんだろうか、なんて思いながら聞いていましたね。

アーティストやミュージシャンのレコーディング現場で、音響機器やDAWを駆使して最高の音を録音するレコーディングエンジニア。音楽がまさに生み出されていく現場に関わることは非常に刺激的であり、大きなやりがいのある仕事だといえるでしょう。 そんなレコーディングエンジニアたちのリアルに迫るべく、都内3箇所にプロユースのレコーディングスタジオを構え、さらにはライブハウスの運営も行う Studio A-tone(スタジオアートーン。運営会社:株式会社フリーマーケット)に関わるプロフェッショナルたちにお話しを伺います。

asu
2023-09-209min read

第1弾となる本記事は、スタジオ入社3年目の澤畑 慧(さわはた けい)さんにお話を伺っています。

前回の記事では、澤畑さんがどんなお仕事を、どのように取り組んでいるのか、というリアルな “現在" のお話を伺いました。

↓前回の記事はこちら

新人スタジオエンジニアのリアルなお仕事(1)|1番やらなければいけないのは、『周りを見ること』。 | ONLIVE Studio blog
アーティストやミュージシャンのレコーディング現場で、音響機器やDAWを駆使して最高の音を録音するレコーディングエンジニア。音楽がまさに生み出されていく現場に関わることは非常に刺激的であり、大きなやりがいのある仕事だといえるでしょう。 そんなレコーディングエンジニアたちのリアルに迫るべく、都

今回お聞きするのは「そもそもなぜ音楽業界を目指し始めたのか」。音楽体験の原風景や、就職活動での「Studio A-tone」との出会いに迫ります。

音楽業界を目指し始めたキッカケについて

澤畑さん Studio A-tone Aスタジオコントロールルームにて

−最初に音楽に興味を持ったキッカケはなんですか?

小さい頃から習い事を結構やってまして。小学校から中学に入る前ぐらいまでピアノをやっていたり、 学校のクラブイベントでやっていた金管バンドで、トロンボーンを演奏したといった音楽経験があります。どちらかというと、やらされていた、 という表現が近い感じなんですけど(笑)。

母が音楽好きなんですよ。子供に色々と選択肢を増やしたい、という考えもあったと思うんですけど『音楽に触れて欲しい』というのがおそらく大きかったと思います。姉もピアノをやっていて、僕も物心つく前からずっとやっていましたね。自分からやりたいと言ったわけではないんですが、それでも発表会などに出た時はやはり楽しかった思い出があります。

その後、中学生ぐらいから、自分で音楽を聞くようになりました。

本格的な音楽への入り口になったのは、映画のサウンドトラックです。
迫力があってすごいな、と思ったのが始まりで、そこからアニメなんかを見るようになって。アニメのオープニングや、キャラクターソングなどを聞いて、どんどんオタク気質になりました(笑)。

−その時に聞いたのは何という作品ですか

「もののけ姫(※1)」です。とても壮大な世界観の音楽というのを、子供ながらにしてすごく感じていました。これを超えるものがあるんだろうか、なんて思いながら聞いていましたね。幼少期からずっと好きで、ピアノの発表会で演奏するにしても、久石さんの曲を弾いていましたし、実際この業界に進んだきっかけを増幅させてくれた出会いでした。

(※1)「東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のフルオーケストラによる、オリジナルサントラ。映画『もののけ姫』の曲を完全再現したアルバム。主題歌『もののけ姫』収録。」{TOWER RECORDS ONLINE, 「もののけ姫」サウンドトラック(2009年4月9日),[https://tower.jp/item/573276/「もののけ姫」サウンドトラック],(最終検索日:2023年8月18日)}

−映画の中でも、映像やストーリーなどの情報もありながら、音楽をキャッチしていたのですね。

そうなんですよ。なんだかすごくかっこいいな、というのが最初の入り口でした。
実際に音楽の道に進んでいくことを考えた時に、自分が聞いてた音楽ってどういう音楽なんだろう、というのを振り返る場面があって。その中でとてもよく聞いていたのは、やっぱり久石譲さんだなと思ったんですよね。それを自分の中で分析してみると、久石さんの曲はミニマルミュージック(※2)といって、繰り返しの旋律が多いもので、そういう決まったメロディーが繰り返しあるものが、僕は好きなんだなというのが分かりました。

いろんな映画を見ていても、サウンドトラックにフォーカスするように聞いたりしてて、映像にマッチしてるのがすごいなっていうのを、色々勉強しながら聞いていますね。

(※2)「音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽。現代音楽のムーブメントのひとつ。」{Wikipedia, ミニマル・ミュージック(2003年2月2日),[https://ja.wikipedia.org/wiki/ミニマル・ミュージック],(最終検索日:2023年8月18日)}

−音楽制作のエンジニアを意識したキッカケ

音楽業界を目指し始めたキッカケは、高校に入学した頃に、進路について母親に相談したことです。特に何かやりたいことがあったわけではなかったので、「大学に進学するつもりはないんだけどどういう進路に進んだらいいかな」といった話をしたんですよ。

僕が相談をした時に、母が「少なからず楽器などもやっていたんだから、そういう方面に進むのもありなんじゃない」というアドバイスをくれました。

母親自身が、こういう業界に入りたかったみたいなんです。いわゆるレコーディングエンジニアだったり、ディレクターだったり、プロデューサーみたいな仕事をやってみたかった、という話をしていて。

なので、高校1年生のその頃から専門学校の色んな資料を見て、色んな学校を考えて、音楽業界に行ってみようかな、と思ったのが始まりです。

スタジオエンジニアの就活について

澤畑さん Studio A-tone Aスタジオ Booth にて

−そうして音楽に携わる職業の中でも、エンジニアを選ばれたんですね。就活で、Studio A-tone と出会った経緯を教えていただけますか

専門学校時代に、講師で来ていたエンジニアさんに色々と相談させてもらっていました。その方に自分に合ったスタジオについて質問した時に「澤畑は多分フリーマーケット( A-tone 運営会社)だけだと思う」って言われたんですよ。波長が合うと。

ただ、一旦そのアドバイスは置いておいて、他の色々なスタジオに応募してみたのですが、あえなく落ちてしまいました。面接まで通っても研修で、残念ながらご縁がなかったところが2社ぐらいありました。

その後、専門学校2年生の10月くらいのタイミングで「じゃあ、講師の先生が言ってたところに応募してみよう」と思って、個人的に紹介をお願いをして、面接していただきましたね。

その面接にはいなかったんですが、僕が面接が終わって帰る時に、弊社の社長とちょうどエレベーターですれ違ったんです。その時はまさか社長だとは思わなかったんですけど「こんにちは、失礼します」って言って帰ったんですよ。そしたら、会社を出てから1分ぐらいしてから電話がかかってきて、「来週ぐらいから仮で研修をやってみるか」というお話しをいただいて「もう全然学校休んですぐ行きます!」と言ったのが始まりでしたね。

−タイミングが良くて、とってもご縁を感じますね。一般的に、スタジオに入社するまではどのようなステップがあるのでしょうか。

最初の2週間は仮研修という形で、実際にスタジオではどういうことをしてるのかというのを模索する期間です。それで、実際に本スタジオに行ってみるかどうか、というジャッジを研修生側に任せられます。

その後、実際のスタジオ業務がどういうものなのか、というのを2週間ちょっと教わって、その延長線上という形で本研修で3か月ぐらいスタジオに行って、どういった業務をしているのか、というのを見学させてもらったり、お手伝いさせてもらったり、という流れです。

本研修の3ヶ月が経過したら、実際に就職するのかどうかのお話しになります。続ける意思があれば「お願いします、働かせてください」という流れなんですよね。基本的には他のスタジオもそういったプロセスを取るところが多いと思います。

僕の場合は、本研修の3ヶ月が経った月末に、「え、明日、本研修終わっちゃうんだけど?!」という日に特に連絡がなくて、僕から連絡して、「あのー、明日から僕ってまた行っていいんですか」と聞いたら「あ、澤畑自身が働きたいって思ってくれたら、ぜひぜひ」みたいな感じで(笑)。これは割と特殊な例かもしれないんですけど、スッと自然に入っていったような感じでした。

−正式な入社はいつですか?

専門学校の2年生の時に A-tone の研修があって、卒業とともに入社した、という流れです。入社自体は2月からだったので、在学中の最後の方にはもう会社に所属しちゃっていたという感じですね。

澤畑さん Studio A-tone Aスタジオコントロールルームにて

−とても順調に歩まれましたね。

ドキドキはしましたけどね。専門学校の同期が、2年生になったばかりの4月のタイミングで、他のスタジオに受かってたんですよ。 そういうのを見ていたので、自分としてはちょっと焦り気味でした。ただ、実際、僕も10月ぐらいから軌道に乗り始めていたので、順調ではあったかなと思いますね。

卒業したタイミングでレコーディングスタジオに就職したのも、僕含めて3人だけだったんで。

−少なく聞こえますが、何人くらいが就活していたのでしょうか。

音響芸術科というクラスの中にはいたんですけど、そこからさらにMA(※3)という、映像系やラジオスタッフ専攻とか、僕が所属していた、レコーディングエンジニア専攻という学科の在籍人数で言うと、15人以上はいたと思います。その中で3人だと思うと、少ないかなとは思います。

(※3)Multi Audioの略。一般的に、番組やCMなどの編集された映像にセリフやナレーション・効果音・BGMなどを加え、音質やバランスを調整、音の最終仕上げを行うことを指す。

−狭き門というのを改めて感じました。

そうですね。しかも、僕の時期はちょうどコロナ禍だったんです。 色々と制限されている状態で、レコーディングもあまり案件がない時期だったので、一種の氷河期なんじゃないか、と思うくらい就職の募集も少なかったです。レコーディングスタジオの会社ホームページなどを調べても、募集をしていないところが結構多くて。「あー、ないなぁ、どうしよう」と思ってたんですよ。ただ実際には、自分からアタックしたというか、 「行きます。行かせてください!」という風に言うと、意外にスタジオは「それじゃあ研修までやってみるか」というスタンスになってくれるところも多いかなという印象です。

自分で扉を叩いてみないと分からない、というのがかなりありますね。専門学校で紹介されている会社の中だけだと、 やっぱりどうしても入り口は狭いかなと思います。ちょっとぶっちゃけた話ですけど。

A-tone も僕が面接をしてもらったタイミングでは、募集してるわけではなかったです。ホームページにも募集を出していたわけでもなく。A-tone と何回かお仕事をしたことがあるエンジニアさんに窓口として紹介していただいて、僕が入った、滑り込んだ、という感じだったので。割とぐいぐい行かないとダメなんだなというのは痛感しましたね。

澤畑さん Studio A-tone Aスタジオコントロールルームにて

音楽業界を目指し始めたキッカケや、就職活動から研修を経て入社に至るまでの内容など、リアルなエピソードをお話しいただきました。

自ら行動した結果、「Studio A-tone」と出会った澤畑さん。音楽業界は狭き門だからこそ、様々な経験や出会いを積極的に求めることで道が開け、未来の可能性を広げていくのかも知れません。

ここまでのインタビューで、"現在"、"過去" について伺ってきましたが、最終回となる次の記事では、これからの目標など “未来” についてお聞きします。

次の記事はこちら!

新人スタジオエンジニアのリアルなお仕事(3)| 最終的にはフルオーケストラの録音をやれるようになるのが僕の目標ですね。 | ONLIVE Studio blog
アーティストやミュージシャンのレコーディング現場で、音響機器やDAWを駆使して最高の音を録音するレコーディングエンジニア。音楽がまさに生み出されていく現場に関わることは非常に刺激的であり、大きなやりがいのある仕事だといえるでしょう。 そんなレコーディングエンジニアたちのリアルに迫るべく、都

プロフィールご紹介

澤畑 慧 氏

名前:澤畑 慧(さわはた けい)
所属:Studio A-tone(株式会社フリーマーケット)
所属年数:2021年〜
生年月日:2001年2月9日
出身:神奈川県横浜市
出身校:日本工学院専門学校音響芸術科 八王子校
趣味:オンラインゲーム、アニメ、ライトノベル鑑賞
音楽以外での目標:綺麗な景色を見る旅がしたい

Studio A-tone(スタジオアートーン)

Studio A-tone 東麻布
  住所:東京都港区東麻布1-8-3 エスビルディング
Studio A-tone 四谷
  住所:東京都新宿区四谷三栄町14-5 名倉堂ビルB2
Sound Valley
  住所:東京都新宿区四谷本塩町15-12 カーサ四谷 羽毛田ビル B1,B2
WEBサイト:https://www.studio-a-tone.com
E-mail:info@studio-a-tone.com

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Written by
asu

5歳の頃にピアノを始め、鍵盤や打楽器に触れる。 学生時代はヒットチャートを中心に音楽を聴いてきたが、 高校生の頃にラジオ番組を聴くのが習慣になり、 次第にジャンルを問わず音楽への興味を持つようになる。 野外フェスや音楽イベントへ通い、ライブの持つパワーや生音の素晴らしさを実感。 現在はピアノと合わせてウクレレを練習している。 弾き語りが出来るようになるのが目下の目標。

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