リミッターとは?
リミッターはその名の通り、定めた閾値(しきいち)をリミットとして、その値よりも音量が超えないように圧縮してくれるエフェクトです。
このような音のダイナミクスを調整することができるエフェクトを、ダイナミクス系のエフェクトと呼びます。
リミッターを使う場面
リミッターは、以下の様な場面で使用されます。
最大値の設定
リミッターで最大値を設定することによって、瞬間的にクリッピングしてしまっている音を抑えることができます。
音圧の調整
リミッターは、設定された閾値を超える音を圧縮します。この結果として、音量差が縮まりダイナミクスが整えられるため、全体の音圧調整に役立ちます。
音楽業界には、1990年代後半から2010年代頃まで、音楽性よりも音圧を上げることを重視する「音圧戦争」という時代がありました。
その時代にリミッターは過度な音圧上げに使われていましたが、現在では「ノーマライズ」という制限もあるため、音圧上げ目的でリミッターを使用する場合は注意が必要です。音圧戦争やノーマライズについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧さい。
また、音圧に特化したリミッターはマキシマイザーと呼ばれます。マキシマイザーについては、後ほど詳しくご説明いたします。
リミッターとコンプレッサーの違いとは?
リミッターは、コンプレッサーの一種とも見なすことができます。なぜなら、「閾値を超えた音を圧縮する」という基本的な原理は同じだからです。
実際に、コンプレッサーとリミッターを兼ね備えている製品も存在します。
それでは、リミッターとコンプレッサーの違いは何でしょうか。
それは、圧縮率の違いです。コンプレッサーの圧縮率はこちらで任意の数値に設定できますが、リミッターは圧縮率が ∞:1となっています。
コンプレッサーの場合、設定した閾値を超える音量があれば、設定した閾値からはみ出た音に対し、設定した圧縮率で音が圧縮されます。そのため、音が完全に閾値を下回ることはありません。
一方リミッターは、定められた閾値よりも音がはみ出ないように、リミッター側で圧縮率を決定します。つまり、音量がどれだけ大きくても設定した閾値より超えないように圧縮されるということです。
このことから、一般的に圧縮の比率が10:1 よりも大きい場合は、リミッターと見なされます。
マキシマイザーとの違いは?
マキシマイザーもまた、リミッターに似ている役割を持っています。
マキシマイザーは全体的に音量レベルを持ち上げてくれるエフェクトで、指定したスレッショルドを超えた部分に対し、リミッターの原理が働きます。
イメージとしては、閾値を天井に、全体レベルが上がっていくというイメージです。
ここまで読んで、「リミッターと同じじゃないの?」と困惑している方も多いかと思います。実際に、リミッターとマキシマイザーは、ほぼ同義語として捉えられていることが多いです。また、リミッターの原理を採用していることから、マキシマイザーはリミッターの一種としても考えられるでしょう。
リミッターとマキシマイザーの違いは、使用する目的の違いです。
両者の名前を見ると分かりやすく、リミッターは、一定以上の音を超えないようにする、マキシマイザーは音圧を上げるという目的があります。
マキシマイザーには音圧を綺麗に上げてくれるアルゴリズムが組み込まれているなどの工夫がされているため、より音圧を上げることに特化したリミッターと考えても良いでしょう。
リミッターの種類
マルチバンド or シングルバンド
マルチバンドリミッターとは、周波数域ごとに設定ができるリミッターです。
一定の周波数域のみリミッターをかけて、他はかけない、あるいは周波数域ごとに異なる設定でリミッターをかけることができます。
一方シングルバンドリミッターは、周波数域ごとに設定ができないリミッターのことです。
リミッターのパラメーター
シーリング
シーリングとは天井という意味です。
文字通り、音量の天井を意味し、最大音量の設定ができます。
アタックタイム
アタックタイムは、スレッショルドに到達してからリミッターがかかるまでの時間です。
スレッショルドに到達しない音、到達する音の境目がはっきりしていると不自然な音になってしまいます。アタックタイムでは、リミッターがかかるまでの時間を設定することによって、より自然にリミッターをかけることができます。
リリースタイム
リリースタイムでは、リミッターが外れるまでの時間です。アタックタイムと同じ理由で、適宜リリースタイムを設定することで自然な音にすることができます。
ゲイン
音源の出力を上げるパラメーターです。
メーカーによってはこのゲインが「スレッショルド」や「インプット」などのように表記されている場合があります。
リミッタープラグイン
この章では、業界でよく使用される定番のリミッタープラグインの中から2つご紹介いたします。
FabFilter Pro-L2
多くのエンジニアが愛用しているリミッター。
8つものリミッターのアルゴリズムを搭載している高性能なリミッターです。
EBU R128、ITU-R BS.1770-4、ATSC A/85といった規格のラウドネスメーターも搭載しています。
Oxford Limiter
こちらもプロ御用達のリミッター。特徴は、癖のない透明感のあるサウンドが特徴とされています。
ITU-R BS.1770-4 標準に対応もしています
まとめ
以上、今回はリミッターについてのご紹介をしました。
コンプレッサーやマキシマイザーなど、似ているものが多く、理解するのも大変ですよね。
今回ご紹介したように、それぞれ作られた目的が異なるため、目的によって使い分けると良いでしょう。
また、実際に聴き比べてみてその効果を感じることも大切です。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。