
エレキベースとは?
エレキベースは、ピックアップ(※1)を搭載した、低い音域を担当する弦楽器です。
エレキベースが登場する前、ポピュラー音楽のベースにはウッドベース(コントラバス)が使用されることが多かったですが、エレキベース普及後はエレキベースに取って変わることが多くなりました。
それでは、エレキベースにはどんなものがあるのでしょうか?
次章から、エレキベースの定番の種類を見てみましょう。
(※1)ピックアップとは、弦を弾いたときの振動を電気信号に変える装置です。この電気信号がアンプに送られ、音が増幅されます。
有名なモデルから見るエレキベースの種類
Fender Precision Bass(プレシジョン・ベース)
プレシジョン・ベースは、1951年にFender(フェンダー)社によって販売されたエレキ・ベースです。
このモデルは、世界で初めて商業的に成功したエレキベースと言われています。
ノイズを打ち消すスプリットコイル・ピックアップ(1957年以降)を採用しており、太くてパンチ力のあるサウンドが特徴です。
プレシジョン・ベースが登場する前、ベースの主流であったアップライトベースには、フレットが存在しませんでしたが、Fender社が開発したこのプレシジョン・ベースではフレットを採用しており、演奏者に「正確(Precision)」な音程を提供しました。
また、担いで演奏できる機能性や、アンプを通したサウンドは、当時革命的で、瞬く間に普及していったとされています。
プレシジョン・ベースの愛用者には、Pink Floyd(ピンク・フロイド)の Roger Waters(ロジャー・ウォーターズ)や、Guns N' Roses(ガンズ・アンド・ローゼズ)の Duff McKagan(ダフ・マッケイガン)などがいます。
Fender Jazz Bass(ジャズ・ベース)
ジャズ・ベースは、1960年に Fender社によって導入されたモデルです。
このジャズ・ベースは、プレシジョン・ベースとともに、エレキベース界の二大定番モデルとして広く知られています。
デュアル・シングルコイル・ピックアップを備えており、身体にフィットさせるために設計された左右非対称のボディが特徴的で、この見た目はジャズ・マスターを参考にデザインされています。
サウンドは抜けが良く、明るいトーンが特徴です。
ジャズ・ベースは1958年に発売されたエレキギター「ジャズ・マスター」の兄弟機種として登場しました。発売当初はジャズで使用されることを想定していたため、「ジャズ」という名称がついていますが、現在ではさまざまなジャンルで使用されています。
ジャズ・ベースの愛用者には、U2(ユーツー)の Adam Clayton(アダム・クレイトン)や、Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)の John Paul Jones(ジョン・ポール・ジョーンズ)などがいます。
ちなみに、2大巨塔であるジャズ・ベースと、プレシジョン・ベースをハイブリットさせたモデルで、PJベースというモデルも Fender社から発売されています。ジャズ・ベースとプレシジョンベースのそれぞれのピックアップを搭載しており、幅広い音色を提供します。
Music Man Stingray(スティングレイ)
Fender社の創設者である Leo Fender(レオ・フェンダー)が、開発に携わり、1976年に Music Man社から発売されたモデルです。
低音はパンチがありつつも、中高音域はクリアなサウンドに定評があり、スラップ奏法とも相性が良いサウンドです。
Stingray は手元で EQ をいじれるツマミ、アクティブサーキットを搭載しており、これは発売当時は画期的なアイディアでした。
このアクティブサーキットによって、演奏者はアンプ側ではなくギター側で音色の調整が可能になりました。
現在は Ernie Ball(アーニーボール)社に買収され、Music Man というブランドになっています。
愛用者には、Red Hot Chili Peppers(レッド・ホット・チリ・ペッパー)の Flea(フリー)などがいます。
Fender Mustang(ムスタング)
ムスタングベースは、Fender 社によって1966年に販売されたモデルです。このモデルはギターのムスタングと姉妹機として、当初は学生向けのモデルとして発売されていました。
最大の特徴は、30インチという、通常のベースよりも短い「ショートスケール」を採用している点です。また他のベースよりもコンパクトなボディから、演奏しやすいモデルとして定評があります。
サウンドは温かみがあり、そのサウンドやショートスケールによる演奏面での特徴から「じゃじゃ馬(Mustangは英語で、野生の馬という意味)」と表現されることも多いです。
また、Leo Fender が Fender社 に在籍中、最後にデザインしたベースとしても知られています。
Höfner 500/1(ヴァイオリンベース)
Höfner(ヘフナー)社が1955年に販売を開始したエレキベースで、ヴァイオリンベース(※2)の代表格です。
サウンドは、ボディが空洞のホロウボディならではの温かみがあり、音の伸びはやや短めです。
愛用者には、The Beatles(ビートルズ)の Paul McCartney (ポール・マッカートニー)などがいます。
(※2)ヴァイオリンベースとは、その名の通り、見た目がヴァイオリンに似ているベースのことを言います。
Rickenbacker 4000series(リッケンバッカー)
Rickenbacker(リッケンバッカー)社が製造している、エレキベース Rickenbacker 4000series です。
1960年代にビートルズがリッケンバッカーのギターやベースを使用していたことで一躍有名になりました。
材質にメイプルを使用しており、そのサウンドはタイトな低音と、金属的なジャリっとしたサウンドです。
Rickenbacker社は1931年から続く老舗で、世界で初めてエレキギターを製造した会社とも言われています。
愛用者には、The Beatles の Paul McCartney(ポール・マッカートニー)、YES の Chris Squire(クリス・スクワイア)などがいます。
構造や機能でみるベースの種類
フレットレス・ベース / フレット付きベース
通常、指板上には音程を区切るための「フレット」と呼ばれるものが設けられています。このフレットがあることにより、演奏者はどこを押さえればどの音程が出るかがわかるため、演奏がしやすくなります。
一方で「フレットレス・ベース」と呼ばれる、フレットがないタイプのベースも販売されています。
このフレットがないことにより多彩な表現ができるメリットがありますが、一方でフレット付きのベースよりも、演奏の難易度は上がります。
アクティブベース / パッシブベース
エレキベースは、アクティブベースとパッシブベースの2種類に大きく分けられます。両者の違いは、内部にプリアンプ(電源を必要とする音質調整回路)を搭載しているかどうかにあります。
内部にプリアンプを搭載しているものをアクティブベース、搭載していないものをパッシブベースと呼びます。
さまざまな違いがありますが、最も大きな特徴は、アンプ側で行うようなイコライザー調整(低音・高音のブースト / カット)を、ベース本体のつまみで行えるという点です。
ホロウボディベース / ソリッドボディ
ホロウベースとは、ベースのボディに空洞があるタイプのベースのことです。
一方で、空洞のないタイプをソリッドボディといいます。
先ほどご紹介した例で言うと、ヴァイオリンベースはホロウボディベース、一方でその他のエレキベースは全てソリッドボディとなっています。
多弦ベース(5弦、6弦など)
通常、ベースは4弦が多いですが、5弦、6弦のタイプもあります。
多弦ベースと、スタンダードな4弦タイプのベースとの一番の違いは音域です。
多弦ベースでは、より低い音域を出せるというメリットがあります。また、弦が多くなる分、通常のベースよりもネックが太くなっています。
エレキベース初心者におすすめは?
初心者でまず初めの一本としておすすめしたいのは、ポップスからロックまで幅広く対応できるため、プレシジョン・ベースがおすすめです。
また、バラードなどの落ち着いた音楽が好みであればジャズ・ベースも相性が良いでしょう。
予算に余裕がある方には、Fender社がおすすめです。音のクオリティや作りの良さで、長く使える1本になるでしょう。
もう少し価格を抑えたい方には、Fender社が展開するブランドである Squier(スクワイヤー)がおすすめです。Fender の設計を引き継ぎつつ、コストパフォーマンスに優れたモデルが揃っています。
番外編:エレキベース以外にはどんなベースがある?
今回の記事では、エレキベースを軸にしたベースの種類をご紹介していますが、番外編として、以下に楽器の種類からみたベースの種類をご紹介します。
アコースティックベース
アコースティックベースとは、その名の通り、アコースティックギターのベースバージョンです。
ホロウボディで、アンプを使用せず演奏することができますが、ピックアップやプリアンプをつけることで、エレキアコースティックベースとしても使用できます。
ウッドベース(コントラバス)
ウッドベースは、ジャズやブルースなどといったジャンルで使用されます。
ウッドベースの他にも、ダブルベース、アップライトベース、コントラバスなど様々な呼び方がありますが、どれも同じ楽器です。
クラシックでは主にコントラバスと呼ばれ、弓をつかって演奏されることが多いですが、ジャズなどのポピュラー音楽では指をつかって演奏するピッチカート奏法が主に使用されます。
ウクレレベース
ウクレレベースとは、その名の通り、ウクレレのベースバージョンです。
コンパクトながらもベースの響きを得ることができ、音はアップライトベースに似ています。
弦がシリコン製のゴムやポリウレタンでできているものもあり、ちょっと変わった遊び心を取り入れたい方におすすめです。
シンセべース
シンセベースとは、シンセサイザーで作られた、ベースの音です。
シンセサイザーが広く普及した1980年代以降広まりました。
HIP-HOP や R&B、ポップ、EDM などのジャンルで使用されることが多いです。
シンセベースの中でも、リースベースや808ベースなど、定番のサウンドには名称がついています。こちらはまた別の機会にご紹介したいと思います。
まとめ
以上、今回はエレキベースを中心に、様々なベースの種類をご紹介しました。
エレキベースという同じ括りでも、様々なサウンドがありますね。
作りたいジャンルに合わせて、楽器を選択する手がかりに、是非今回の記事をご参考にしてみてください。

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。