モニタースピーカーとは?=音を忠実に再現する
モニタースピーカーは音楽制作時に音を正確に確認するために使用されるスピーカーで、特徴は「音を忠実に再現」することです。
品質が高いモニタースピーカーほど、音の偏りがなく、原音に忠実な再生が可能です。
では、「音を忠実に再現」するためにはどのような部分が指標となるのでしょうか?
次章から詳しく見ていきましょう。
フラットな周波数特性
モニタースピーカーをはじめとしたオーディオ機器には、その機器がもつ「周波数特性」という数値があります。
これは、低域や中域、高域など、各帯域をどれくらいの音圧で再生できるかを表したもので、再生可能な周波数帯域やそのスピーカーの特色を理解することができます。
たとえば、鑑賞用スピーカーは音を派手に聞こえさせるために、原音よりも低域と高域が強調されて再生されるものが多いです。これは低音の「ドンドン」と高音の「シャリシャリ」をとってドンシャリ型と呼ばれたりします。
一般的にモニタースピーカーに適しているスピーカーは、どの帯域によっても偏りがないものとされています。
そのようなものの周波数特性の線は水平(フラット)になるため、フラット型とも呼ばれます。
ダイナミックレンジが広い
ダイナミックレンジとは、スピーカーが再現できる「一番小さい音」と「一番大きい音」の間の幅を示す指標です。
このダイナミックレンジが広いスピーカーは、微細な音から圧倒的な大音量まで、音の細かいニュアンスをしっかりと再現します。
定位感
定位とは、それぞれの楽器がどこから鳴っているかの位置を表します。
この位置が正確に聞こえることによって、音の広がり方や、それぞれの楽器の音を忠実に把握することが可能です。
この定位感は、ミックスの考え方について知っていると、より理解がしやすいと思います。
是非以下の記事も合わせてご覧ください。
モニタースピーカーの必要性と音を正確に確認する大切さ
音楽制作において私たちが普段聴いている音楽は、ドラムやベース、ギター、ボーカルなど、様々な音が混在しています。
市場に出回っている多くの音楽は、それぞれの音が絶妙な音量バランスに整えられてリリースされているのです。
鑑賞用のスピーカーは音を派手に聞こえさせるために、原音に脚色を加えて再生するものが多いです。
たとえば重低音が強調されるスピーカーで音量バランスを整えた場合、実際に鳴っている音量よりも低音が大きく聞こえてしまうため、本来はもっと音量を出すべき楽器の判断がつかず、出来上がった曲は聞こえていた音に反し、低音が乏しいものになってしまうでしょう。
どんな再生環境でも意図する音量バランスでリスナーに楽曲を提供できるように、それぞれの音を偏りなく聴くことが重要なのです。
また、PC のスピーカーはレンジが狭く、高音と低音が特に十分に再生されないため、これまでパソコンのスピーカーで作業していた方は、モニタースピーカーを使用することで、今まで感じることのできなかった音の違いを聞きとれるようになるでしょう。
音の違いが分かる耳が養われ、制作の成長にも繋がります。
モニタースピーカー以外じゃだめなの?
先ほどもお伝えしたように、鑑賞用スピーカーや鑑賞用ヘッドホンは私たちが音楽を楽しむために設計されており、音に脚色が加えられているので音楽制作にはあまり適しません。
そこで、モニターヘッドホンというものもあります。モニターヘッドホンも音楽制作で音を正確にモニターするためのツールとして使用されます。
モニタースピーカーよりも場所を取らず、コストも低い傾向にあるので、音をあまり出せない環境の方はモニターヘッドホンを使用するのもよいでしょう。
ここで気をつけておきたいポイントは、モニタースピーカーとモニターヘッドホンは、それぞれ音の聞こえ方に違いがあることです。
モニターヘッドホンとの違いは、以下の「モニタースピーカーとの違い」の項目で詳しく解説しています。
合わせてご確認ください。
この違いから、将来的には状況や使用する処理に合わせて用途を分けて使うことがおすすめです。
モニタースピーカーの選び方と注意点
モニタースピーカーを選ぶ際に確認しておきたいことは、再生環境です。
スピーカーは構造上、良い音とされるものはサイズが大きくなる傾向にあります。
これには様々な理由がありますが、その一つとして、低音を出すためにはウーファーを大きくする必要があることが挙げられます。(逆に言えば、サイズが小さいスピーカーはどうしても低音が弱くなりがちです。)
さらに、そのウーファーを活用するためには、ウーファーに振動を起こすための音量が必要となります。
大きなスピーカーを導入する際は、合わせて音量が出せる環境かどうかも確認しましょう。
音量の他にも、部屋の広さも注意したいポイントです。
小さい部屋に対して大きなモニタースピーカーを使用する場合、適切な設置場所やリスニングポイントを確保することが難しいです。
これらのことから、再生環境がどれくらいの部屋の大きさで、どれくらいの音量を出すことができるかということを加味してスピーカーを選択する必要があります。
音をあまり出せない再生環境の場合は、予算があってもその部屋に合った小さめのスピーカーを選ぶか、状況に合わせてモニターヘッドホンを選択した方がよい場合もあります。
6帖〜10帖程の部屋には5〜7インチ程度のスピーカーが適切とも言われています。
また、低音を補うために「サブウーファー」という低音部分に特化したスピーカーもあります。補佐的にサブウーファーの購入を視野に入れるのも良いでしょう。
はじめは今の状況にあったスピーカーを購入し、余裕がでてきたら再生環境を整えることも視野に入れてグレードアップしていくのが現実的でしょう。
どのスピーカーを選ぶかは、なかなか難しいですが、定番品はやはりおすすめです。
定番品はコスパが良く、信頼性が高いブランドが多いだけでなく、使用者が多いです。そのため、同じ機材を使って確認することで、確認できる音の相違がより生じにくいという側面があります。
とはいえ、自分との相性も大事です。お店に行って、自分の予算に合ったスピーカーを一通り聴き比べて自分の耳で確かめてみるのも良いでしょう。
知っておきたいスピーカーの用語
「スピーカーについて調べていると、なんだかよく分からない用語がいっぱい...。」
そんな方のために、この章ではスピーカーの仕様を表す用語を解説します。
ニアフィールドモニター、ラージモニタースピーカー
ニアフィールドモニターとは、近距離で使用することを想定されたモニタースピーカーです。
ラージモニタースピーカーは、レコーディングスタジオに置いてあるような大型のスピーカーです。また、2つの中間のミッドフィールドスピーカーも存在します。
つまり、それぞれ適切な視聴位置に必要な距離が異なります。
一般的に DTM のモニターとして使用されるのは、ニアフィールドモニターです。
ウーファー、ツイーター
スピーカーは低音域をウーファー、高音域を担当するユニットをツイーターと呼びます。
このウーファーとツイーターに分けられているタイプのものを2ウェイと呼びます。
さらに中音域専用のスコーカーと呼ばれるユニットが搭載されているものもあり、これは3ウェイと呼ばれ、ハイエンドのモデルに搭載されていることが多いです。
また、すべての音域をひとつのユニットが対応するものを、フルレンジと呼びます。
アクティブ、パッシッブ
アンプがスピーカーに内蔵されているものを「アクティブ(またはパワード)」、アンプが別で用意が必要なものを「パッシブ」と呼びます。
パッシブ型はアンプによって音に変化をつけたりカスタマイズができますが、少し玄人向けになります。
なので、一般的に家庭でも使用できるアクティブタイプがおすすめです。
バスレフ、密閉型
スピーカーには、ユニットとそれを覆う板の部分の構造によって、平面型や後方開放型などさまざまな方式があります。今回は一般的なモニタースピーカーで採用されることの多いバスレフと密閉型をご紹介します。
密閉型は背面が密閉されている箱型のスピーカーのことです。
一方でバスレフ型は、スピーカーに空気の通り道(ポート)を設けることによって、低音の出力を向上させる構造です。密閉型に比べて、低音のボリューム感が豊かになる傾向があります。
おすすめモニタースピーカー
YAMAHA HS Series
スタジオに置いてあるスピーカーの定番として知られる YAMAHA の NS-10M の後続機とも言われているシリーズです。
お値段と品質のバランスがよく、初めての購入で選択されることが多いです。
白と黒の2色展開で、部屋のインテリアに合わせて選ぶことができます。
後方にはバスレフがあり、低音を補佐してくれます。
特に定番は5インチのモデルで、ペアで3万円超え程度です。
オープン価格で、サウンドハウスでは 33,960 円(税込)となっています。(2024/11月現在)
YAMAHA ( ヤマハ ) / HS5 定番スタジオモニター ペア サウンドハウス
KRK Rokit Series
KRK Systems – krkmusic KRK Systems
黄色いウーファーが特徴的な KRK。
お値段は一番安価な5インチのモデルがペアで大体6万円超え程度です。
中低音域に強く、EDM や HIPHOP など低音がしっかりと出るジャンルとの相性が良いです。
5インチのモデルはサウンドハウスにて1本 33,000 円(税込)となっています。ペアだと66,000円です。(2024/11月現在)
Focal SHAPE Series
Shape - フォーカル プロフェッショナル モニターラウドスピーカー Focal
Focal 社の定番スタジオモニターで、少し価格は高めですがそれに見合った性能を備えています。
側面にスピーカー筐体内の空気振動を利用して動作させるパッシブラジエーターを搭載しており、低音の補強が可能。透明度の高いクリアな音質と広がりのある音場で、精度の高い音の確認に最適です。
ONLIVE Studio スタッフは、最近このモニターを購入し、その音の広がり方に驚いたのだとか...。
こちらの4インチのモデルはサウンドハウスにて1本 69,300円(税込)となっています。なので、ペアだと138,600 円です。
※2024年11月5日現在、セール中で一本49,000円(税込)に値下げされているので、お求めの方は今がチャンスです!
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/240317/
まとめ
以上、今回はモニタースピーカーについてご紹介しました。
モニタースピーカーを使用することで、正確な音を把握できたり、さらにはこれまで聴こえなかった音が聴こえるようになります。
聴こえる音が増えることは、自分のアレンジやミックスの成長に繋がるため、初心者の方にこそおすすめしたい機材です。
また、スピーカーから出た音は空気や部屋の空間に反射し、私たちの耳に届きます。
良いスピーカーを購入しても、再生環境が整っていなければ、その性能を十分に発揮することができません。スピーカー選びと同じくらい、音を再生する環境を整えることも非常に重要です。
以下の記事では、モニター環境の整え方やモニタースピーカーの配置についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。