音楽制作のための音響学vol.3 様々なdBの種類

音楽制作のための音響学vo3! 前回はデシベル( dB )についてご紹介いたしました。 今回は具体的にはどんな dB があるのか、音楽制作においてよく使用されるものをご紹介したいと思います。

Nami
2023-08-234min read

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dB SPL(ディービーエスピーエル)

dB SPL は、簡単にお伝えすると空気中で感じられる音のレベルを単純に示したものです。飛行機の音は80dB、一般的な会話は40〜50db などのように使います。

この dB SPL は、厳密にいうと音の大きさを表現するための単位で、音圧とも言います。音圧とは、音が空気や物体を振動させる力や圧力のことです。

vol.2ではdBは相対的な数値を表すもので、種類によって計算式に代入される基準の数値が異なるとお伝えしました。
dB SPL での計算式では、人間が聞くことのできる一番小さい音圧である20 μPaを基準とし、それを0dBと設定したものがdB SPLになります。

dBFS(ディービーエフエス)

dBFS はデジタルオーディオにおける音量レベルを表し、DAW のマスターボリュームに採用されている単位です。

正確には " dB Full Scale " の略であり、デジタルオーディオ信号の最大許容範囲(フルスケール)に対する相対的な音量レベルを表しています。

この単位は、デジタルで表現できる最大値を基準の 0dBFS としているため、この0dBFS を超えるとクリッピングしてしまいます。

dBu(ディービーユー)

dBu はアナログオーディオにおける信号レベルを表すための単位で、アナログオーディオ機器の信号レベルの表現に使用されます。例えば、マイクプリアンプのゲイン設定やミキサーのチャンネルゲイン調整など、信号の増幅や減衰を制御する際に dBu 単位が使われることがあります。

dBuはボルト( Voltage )に対する相対的な電圧レベルを示すもので、0dBu の基準は通常0.775ボルト( V )です。
この値はアナログオーディオの標準的な作業レベルとして広く使用されています。

ちなみに dBv という単位もありますが、dBuと同じものです。dBvは次項のdBVと表記が非常に似ているため、dBu を使用することが多いです。

dBV(ディービーブイ)

dBV は主に音声や音楽の信号の強さや大きさを比較するために使用される単位です。
マイクや、オーディオインターフェースなどといった、音響機器で用いられることが多いです。
dBVは1V(ボルト)を0dB とした基準になっており、電圧レベルを表しています。

よくマイクの仕様書にある、開回路感度が◯◯dBV/Pa (◯mV)と表記されていたら、Pa と言った音圧に対し、マイクから作られる信号レベルの大きさが◯dBVであることになります。

マイクの感度を測定する場合、音圧が1Paかつ1kHz を使用する場合が多いです。しかし、メーカーによってこの部分も異なる場合があるため、確認が必要です。

番外編〜実際の聞こえ方も考慮する考え方〜

Photo by Sandy Kawadkar / Unsplash

これまで、dB という単位はどんなものか見てきました。

この番外編では、dB を用いた単位ではありませんが、いわゆる音量を表す場合に使用されるものです。

RMS

RMS は、信号処理や電気工学などでよく使用される平均値を求める手法の一つです。
RMS は( Root Mean Square )の略称で、この英語を訳すると「二乗平均平方根」となる通り、それぞれの値を二乗しその平均の平方根を出したものです。
つまり、平均的な音圧を表すものと思えば良いでしょう。

人間の耳は早い速度の音は捉えきれず、一定の時間の平均から音量を判断されているとされるため、このRMSが表すものは人間の聴覚に近いと言われています。

一方で、次項でご紹介する、人間の聴覚は周波数によって同じ音量でも聞こえ方の大小が異なるようにできているなどと言った、聴覚特性の部分には考慮されていません。

ラウドネス( LUFS、LKFS )

ラウドネスとは、人間の聴覚上の特性を考慮して音の大きさを表すものです。
ラウドネスには周波数ごとの聴覚感度や、音の長さに対する人間の感度などが加味されて規格が設けられています。
このラウドネスで用いられる単位が LUFS、LKFS です。

そのため、RMSよりもさらに人間の聴覚に近いとされています。

なぜ2種類あるかというと、採用するラウドネスの規格が EBU(欧州放送協会)、ITU(国際電気通信連合)どちら由来のものかで呼び名が別れているからです。

なので、LUFS、LKFS が表すものは同じになります。


まとめ

以上、今回は dB(デシベル)についてお話をしました。
単純に「dB」と言っても、空気中なのか、デジタル領域なのか、アナログ領域なのかなど、フィールドによって基準としているものが異なることが分かりました。

普段は dB の後につく「 SPL 」「 FS 」といった部分は省略されて使用されることが多いので、さらに混乱をまねきやすいですね。

ちなみに、ミックスダウンでは dBFs を用いたピークメーター、RMS メータ、ラウドネスメーターなどが使用されるので、今回ご紹介した基準部分を理解しておくと、自分が今どの数値を調整しているかの把握に役立つでしょう。

Nami
Written by
Nami

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。

監修

Masato Tashiro

プロフェッショナルとして音楽業界に20年のキャリアを持ち、ライブハウスの店長経験を経て、 2004年にavexに転職。以降、マネージャーとして、アーティストに関わる様々なプロフェッショナルとの業務をこなし、 音楽/映像/ライブ/イベントなどの企画制作、マーケティング戦略など、 音楽業界における様々な制作プロセスに精通している。 現在はコンサルタントとして様々なプロジェクトのサポートを行っている。

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