

音楽業界を支える ”メイド・イン・ジャパン” 楽器メーカー特集
日本の製品は、映画『Back to the Future (バック・トゥ・ザ・フューチャー)』で “All the best stuff is made in Japan.(全ての良いものは日本製だよ)” というセリフがあるほど、その精密さやクオリティが世界でも広く知られています。 音楽市場においても例外ではなく、日本の楽器メーカーは音楽の歴史を支えてきました。 今回は、音楽業界で活躍する ”メイド・イン・ジャパン” である楽器メーカーを特集します。あの名機も、身近で使っているあの楽器も、日本のメーカーなんですよ!

制作応援キャンペーン開催中!ヤマハ株式会社
ヤマハ株式会社(以下:YAMAHA)は1887年創業の、静岡県浜松市に本社を構える日本を代表する老舗の楽器メーカーです。
YAMAHA の創設者である山葉寅楠(やまは とらくす)は、医療機器や時計など、様々な修理を請け負う職人でした。ある日オルガンの修理依頼されたことをきっかけに、次第に自らもオルガンの製作に取り組みはじめ、これが楽器事業の始まりとなりました。
オルガン・メーカーとして山葉風琴製造所を立ち上げましたが、オルガンに留まらず、1897年には現ヤマハとなる日本楽器製造株式会社を設立。さらに1900年には、日本で初めて国産ピアノの製作に成功しました。
2026年現在では、ピアノだけでなく、シンセサイザー、ギター、ベース、ベース、管弦打楽器など、幅広い楽器事業を展開し、世界的にも圧倒的なシェアを誇っています。
また、今回ご紹介する楽器だけでなく、スピーカーやミキサーといった音響機器、ネットワーク機器、音楽教室といった幅広い分野で高い評価を受けており、様々な角度から音楽業界を支え続けているメーカーです。
<代表的な製品>
- YAMAHA DX7(シンセサイザー)
1983年に発売された、FM音源を採用したデジタル・シンセサイザー。
国内外問わず広く使用され、80年代のサウンドを作り上げた名機です。
- CFX(アコースティック・ピアノ)
YAMAHA のコンサート・グランド・ピアノの中でも ”最上位” に当たるモデル。コンサートだけなく、国際コンクールでの公式ピアノに採用されるなど、多くのピアニストから支持されています。
ローランド株式会社
ローランド株式会社(以下:Roland) は1972年に梯 郁太郎(かけはし いくたろう)によって設立された電子楽器メーカーです。Roland もまた、YAMAHA と同様に静岡県浜松市に本社があります。
Roland は電子楽器の黎明期時代に、世界で初めてタッチ・センス付きの電子ピアノEP-30や、マイクロ・プロセッサーを搭載したリズム・マシンCR-78など、革新的な製品を生み出してきました。現在もその歩みを留めず、Roland は YAMAHA に並んで楽器事業で高いシェア率となっています。
また、創業者である梯は、MIDI規格の策定において中心的な役割を果たした人物の一人です。その功績が評価され、 Dave Smith(デイブ・スミス)と共に2013年にグラミー賞(Technical Grammy Award)を受賞し、日本人としても大きな快挙となりました。
<代表的な製品>
- TR-808 (リズム・マシン)
1980年に発売された、伝説的なリズム・マシン。
黎明期だった HIP-HOP だけでなく、ハウス、テクノ、そして現代のトラップまで、幅広い音楽ジャンルのサウンドを支え、今もなお広く愛されている名機です。
- TB-303(ベース・シンセ)
1981年に発売されたベース・シンセです。販売当初は人気が出ずに販売停止となりましたが、1980年代後半、意図せずにハウス・ミュージックのサブジャンルであるアシッド・ハウスのサウンド構築に火をつけ、その後の電子音楽の発展にも貢献しました。
株式会社コルグ
株式会社コルグ(以下:KORG)は1963年創業の、東京都稲城市に本社がある電子楽器メーカーです。
新宿歌舞伎町でバーのマスターとして働いていた加藤 孟(かとう つとむ)と、天才アコーディオン奏者である長内 端(おさない ただし)によって創設されました。
加藤が経営するクラブで演奏していた長内は、”正確にリズムを刻んでくれる機械が欲しい” と思い、加藤と共に日本初のリズム・マシン ”Doncamatic DA-20” を開発。これが会社設立のきっかけとなっています。
その後も1970年代には WT-10 という世界で初めて針式メーターを搭載したコンパクト・チューナーを手がけたほか、日本のシンセサイザー開発の先駆者として早くから製品化に取り組むなど、既出のメーカー同様、世界・日本初の製品を生み出し、音楽業界の発展に大きく貢献し続けています。
<代表的な製品>
- miniKORG 700
1973年に発売された、KORG 初のアナログ・モノフォニック・シンセサイザーです。独特なサウンドが喜多郎、ヴァンゲリスなど、多くの国内外のアーティストに愛用された、KORG の原点となった製品でした。
- M1(ワークステーション)
1988年に登場したデジタル・シンセサイザーです。
音源部は PCM音源を採用したほか、エフェクトの搭載、そしてシーケンサー機能と、シンセ一台で制作環境を完結する、ワークステーション・シンセの先駆けで大ベストセラーとなりました。特に80年代後半から90年代の楽曲でM1に内蔵された定番サウンドが多く使われました。
河合楽器製作所
河合楽器製作所は(以下:KAWAI)1927年創設の楽器メーカーです。KAWAI もまた、静岡県浜松市に本社があります。
創業者である河合 小市(かわい こいち)は、彼が10歳の頃から山葉 寅楠の弟子として技術を学び、日本楽器製造(現・ヤマハ株式会社)で勤務したのちに独立。KAWAI を立ち上げました。
“世界一のピアノを作りたい” という河合の想いのもと、1982年にはグランドピアノ一号機を販売。1985年にはショパン国際ピアノコンクール公式ピアノとして認定されました。現在もなおピアノ製造・販売をメインとし、世界のトップ・ブランドの一つとして知られています。
<代表的な製品>
- Shigeru Kawaiグランドピアノシリーズ SK-EX
ショパン国際ピアノコンクールやパデレフスキ国際ピアノコンクールなど、数々の国際コンクールで使用されている、KAWAI の技術のすべてが注ぎ込まれたグランド・ピアノです。
- Kシリーズ
学校や音楽教室などで広く取り入れられている、アップライト・ピアノのモデルです。グランド・ピアノの弾き心地を目指したアクション、モダンなデザイン、幅広いラインナップで多くのピアニストたちに支持を得ています。
星野楽器株式会社
星野楽器株式会社(以下:星野楽器)は、1908年創業の楽器メーカーで、愛知県名古屋市に本社があります。
元々は ”星野書店” という本屋の楽器部門として誕生し、1929年に楽器メーカー”星野楽器店”として独立。創業当初から、オルガンや管楽器、ギターなどの海外製楽器の輸入・販売を行い、いち早く海外に目を向けた先進的な取り組みを進めていました。
1930年代には輸入販売にとどまらず、自社でのギター製作をスタート。さらに戦後にはエレキギターやドラムの生産にも進出し、現在ではギターの Ibanez やドラムの TAMA など、世界的に知られるブランドを擁する楽器メーカーへと成長しています。
<代表的な製品>
- RGシリーズ(Ibanez)
Ibanez は、星野楽器が所有する日本を代表するギター/ベース・ブランド。”RG" は、1980年代に登場し、薄いネックや深いカッタウェイなど、実用的に演奏しやすさに配慮された設計が特徴で、Ibanez というブランドの認知を世界に広めた、象徴的なモデルです。
- Superstar(TAMA)
TAMA は、星野楽器が製造、販売するドラムのブランドです。
YAMAHA 、後述する Pearl と同様、日本発のドラム製品でありながらも、海外アーティストにも広く使用されています。
その中でも Superstar というモデルは、TAMA のドラムの基礎を形成し、さらに世界的なドラマー Billy Cobham(ビリー・コブハム)との契約もあり、”TAMA” というブランドが世界に飛躍するきっかけとなった製品です。
パール楽器製造株式会社
パール楽器製造株式会社(以下:Pearl)は、千葉県八千代市に本社を構える、特にドラムの分野で世界的に名が知られている楽器メーカーです。
1946年に譜面台の製作からスタートし、その後戦後復興期に高まるドラム需要に応えるかたちで、ドラム・メーカーへと発展していきました。
さらに1968年には国産フルートの製作にも着手し、打楽器にとどまらない楽器メーカーとしての歩みも広げていきます。
現在ではアジア、アメリカ、ヨーロッパに拠点を持ち、日本発のドラム・ブランドとして世界トップクラスのシェアと高い評価を獲得。
幅広いラインナップであらゆる音楽ジャンルに対応し、プロからビギナーまで、長年にわたって多くのドラマーに支持され続けています。
<代表的な製品>
- Export(エクスポート)シリーズ
Pearl のエントリー〜ミドル・モデルのドラム・キット。
1996年に100万個の販売を記録して以来、今もなお広く普及しており、リハスタなどでは必ずと言っていいほど置いてある定番シリーズです。
- Master Works シリーズ
Pearl 最高峰のハイエンドのシリーズで、完全カスタム・オーダーのドラム・キットですプレイヤーの要望に合わせて、自分だけの理想のドラム・キットを追求でき、マスターワークスにふさわしい製品となっています。
ものづくりの街・静岡県浜松市
今回ご紹介したメーカーの中で、YAMAHA と Roland、KAWAI の本社は静岡県浜松市にあります。その他にも、静岡県浜松市には楽器関連の会社がなんと200社もあるのだとか。
では、なぜ浜松市には楽器関連の会社が多いのでしょうか。
一つは、地理的な理由があります。浜松市は水や木材といった資源に恵まれているだけでなく、温暖な気候です。そのことから、江戸時代には綿織り機を作る技術のある大工や職人の集まる街となり、ものづくりに適した基盤が作られてきました。
さらに明治時代に入ると、浜松市に YAMAHA の本社が作られます。
ピアノやオルガン、ギターなどといった楽器には木材を使用しますが、その資源と加工技術がすでにあった浜松の土地は、楽器産業に適していたのです。
また、河合小市が YAMAHA から独立し、河合楽器製作所を立ち上げたのも大きな理由の一つでしょう。河合は山葉寅楠の弟子として日本楽器製造株式会社で働き、日本の楽器産業の未来を期待されていた人物です。しかし、山葉の死後、後任社長である天野千代丸の経営不振や賃金交渉の拒否などを理由に、YAMAHA では大きな労働抗争が起きました。
この抗争を受け、河合も会社を離れ独立し、後に YAMAHA に次ぐ大手メーカーとなる河合楽器製作所が立ち上がったのです。
こうして楽器産業が栄えていった浜松の土地には、楽器メーカーだけではなく関連事業も多く作られていきました。
このような背景もあり、Roland は元々は大阪に本社がありましたが、製造拠点としての利便性から、2005年には浜松市に本社を移しています。
浜松市では楽器関連のメーカーが多いことを背景に、日本で唯一公立の楽器博物館である、”浜松市楽器博物館”があります。その展示数はなんと 1500点にも及ぶのだとか。
みなさんも、近くに行った際は立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
まとめ
以上、今回は世界に名を馳せる日本の楽器メーカーを特集しました。
今回ご紹介した楽器は、いずれも音楽シーンを代表するものばかりで、一度は目にしたことのあるモデルもあったのではないでしょうか。
日本の楽器メーカーは、国内にとどまらず世界中で使用されています。家庭で音楽を楽しむための身近なものから、数々の名曲を生み出し一時代のサウンドを形づくってきたプロフェッショナルな製品まで、さまざまな形で音楽産業を支えてきました。
今回は一部のメーカーを紹介しましたが、日本には他にも、楽器メーカーが数多く存在します。
多くの日本企業が、世界の音楽を裏側から支えているという事実には、あらためて驚かされますね。

東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。






