
楽曲制作のやり方はそれぞれのアーティストによって様々な形があると思いますが、私が自分の曲をバンドアレンジにする場合には、基本的にはアレンジャーさんに依頼して編曲してもらっています。
なので今回は、アレンジャーさんに渡す前に行っているギター弾き語りのデモ音源を完成させるところまでを、ひとつの例としてご紹介していきます。
楽曲制作にお困りの方の参考になれば幸いです。
まずは、大まかな流れは以下のようになっています。
- テーマを決める
- サウンドの方向性をイメージする
- 曲を実際に作っていく
- 歌詞をつけていく
- デモを録る
- デモの完成
具体的にどのように進めているか、ご説明していきます。
テーマを決める
楽器を持つ前に、歌い出す前に、私はまずテーマ(コンセプト)を決めます。
今伝えたいメッセージがあり、溢れる想いのまま作っていくことができれば一番いいのはわかっているのですが、「天からアイデアが降ってくる!」みたいなことは、悲しいかな現実にはあまり起こらない奇跡みたいなものです。
なので、何も思い浮かばないときこそ、まずは自分に縛りを設けます。「このテーマ(コンセプト)で書こう!」というイメージを先に固めていくのです。
その際にヒントになりそうな項目をまとめてみます。
発表したい場所を考える
- ライブで歌ったら盛り上がる曲
- ストリーミングサービスで好まれ再生されやすい曲
- サブスクリプションサービスで提供されている特定のプレイリストに入りそうな曲
など、具体的にどこで誰に聴かせるのかを考えてみます。
具体的なリスナーを設定する
自分のための音楽活動ですから、曲作りの段階で、好みを誰かに合わせたり「誰かのために」のようなことを考え過ぎる必要はないと私は考えていますが、「どんな人に聴いてほしいか」「どんな人に喜んでほしいか」など、反応が返ってきたら自分自身が嬉しいと思える対象をイメージするのは、曲作りにおいて重要なヒントになると思います。
発表の時期に合わせる
実際に CD やデジタル音源で販売することが決まっている場合は、そのリリース時期の季節に合わせると、テーマを決めやすいかもしれません。
- 春の卒業式シーズンに合う曲
- 夏の海で騒げそうな曲
- 秋の枯葉が散る中で流れていそうな曲
- 冬のクリスマス前に聴きたくなる曲
このように設定していくと、頭の中に絵が浮かんできませんか。
そこから、具体的な登場人物、物語の流れまで決めていくと、さらなる展開が見えてくるかもしれません。
身近なものから物語を絞る
- 最近観た映画の中で印象的だったワンシーン
- 最近読んだ本で感動したセリフ
- 最近出会った人の衝撃的な経験談
映画や小説からヒントをもらう、というのはよくあるやり方かと思いますが、映画なら2時間、小説なら何百ページという長さのものをまとめるのはなかなか大変な作業になってしまうので、そのうちの一部分を抜き出して5分の歌に落とし込むと考えると、イメージが湧きやすいですよ。
誰か特定の知り合いや友人を主人公に設定してフィクショナルに作り上げてみる、というのも面白いかもしれません。
サウンドの方向性をイメージする
テーマを決めたあとも、私の場合はまだ楽器を持ちません。ここで闇雲にギターを鳴らしてみたところで、自分の手ぐせの延長の、似たような曲しか生まれないからです。
私の場合この次の段階としては、最終的にバンドアレンジがついたとしたら、というところまで考えて、サウンドの方向性を決めていきます。
こんな感じに仕上げたい!というイメージを決めるために、”ピン!”とくる曲に出会えるまでひたすら曲を探してみます。
既存曲のリサーチ
YouTube や Spotify などのストリーミングサービスをサーフィンして、テーマに合うサウンドのイメージを探っていきます。
始めは連想されるアーティスト名などで検索して、そこに出てきたオススメなどを次々辿っていきます。
気に入った曲は再生リストやプレイリストにまとめていくのもおすすめです。
音楽ジャンルから決めていく
世界各国あらゆる音楽ジャンルがあるので、それらの中からヒントを見つけていくのも楽しいです。各ジャンルでパッと思い浮かぶアーティスト、調べたら出てくる有名なアーティストなどから検索していき、そのジャンルの空気感というのを体に取り込んでいきます。
それぞれ聴きながら、テーマに沿った曲になるかな?というのを頭の中で照らし合わせながら、音楽をたくさん聴いてみます。
曲を作る
コード進行とメロディを組み立てる
「このテーマとサウンドで行ってみよう!」というイメージがなんとなくまとまったら、コード進行とメロディを作っていきます。
先ほどリサーチして集めた曲の中から、ピンときた曲のコード進行やリズムパターンをなんとなく真似して弾いてみます。いろいろなパターンを試していくと、好みの進行や展開が見えてくるので、合うメロディーを歌いながら当てはめてみます。良いフレーズが生まれてくるまで、いろんなコード進行で何度も試してみます。
私の場合、基本的に歌詞は曲が固まってから集中してまとめているのですが、作ったメロディーを覚えるためだけに、この段階で適当に言葉を埋めています。
ボイスメモでアイデアを録音
ラフなアイデア出しが続くこの段階の制作では、すべての録音にスマホのボイスメモ機能を使っています。
全体の構成やコード進行、メロディーが大体固まったら、それもボイスメモに録音して、それを聴きながら作詞の工程に入ります。
歌詞をつける
作詞作業にはまとまった時間を使うことが多いです。
「今日はこの前作った曲の歌詞を考える日!」と設定して、その日一日中録ったデモを聴きながら、必要な資料などに当たっていきます。
私の場合は、短編小説や雑誌から言葉や世界観を集めてくることが多いです。
短編小説
短編小説には、簡潔にまとめられた物語の美しい流れがあるので、そこでの言葉の選び方には歌の詞に応用できるヒントが詰まっています。そのために、日頃から短編小説はたくさん集めておくと作詞作業に有効です。
雑誌
雑誌もとても参考になります。旅行雑誌の情緒あるコメントにはロマンがあるし、ファッション誌のキャッチーな見出しには心が踊るものがあるし、週刊誌のコラムにはハッとする視点が詰まっています。こういったところから、気になる言葉をバラバラに集めながら、頭の中でストーリーを組み立てていきます。なので、作詞デーになると私は本屋さんに一日入り浸ります。
友人の言葉
何気なく交わした友人との会話にもヒントが隠れているので、作詞に行き詰まったら、友人に会いにいくのもオススメです。生身の人間の生活で起こる生の言葉のなかに、鋭い言葉が差し込まれていることが多いです。
デモを録る
歌詞までなんとなく固まってきたら、DAW ソフトで録音します。私の場合は Logic Pro を使い、ギターと歌、コーラスまで。これぐらいの作業量なら、Mac に始めから入っている GarageBand というソフトで十分足ります。
このあとアレンジャーさんにアレンジを頼む場合には、BPM に合わせたデータが必要になるので、BPM をはじめに設定し、クリックを聴きながらギター→歌の順番で録音していきます。
そして、アレンジに関わる部分なので、できるだけハモリやコーラスも入れておきます。
デモの完成
ここまできたら、デモが完成!
録音したすべてのトラックを合わせたものと、ギター・歌・コーラスをそれぞれ別のトラックにして書き出します。これで、いつでもアレンジャーさんに送れる状態になります!
まとめ
以上が、宇宙まおのソングライティングのいつもの流れになります。
集中しすぎたときには少し息抜きすることもとても大切ですよ!
散歩をしてみたり、料理をしてみたり、お風呂に入ると、そこで何気なく聞こえてくる音や見えてくる景色のなかにもヒントがあったりします。
みなさんの制作の一助になれば幸いです。
人によって様々な独自のやり方があるので、ご自分に合うものを探してみてください。
良い曲を作るために、一緒にがんばりましょう〜!

シンガーソングライター。2012年デビュー。作詞作曲、ステージでのパフォーマンスを軸に活動しています。サッカーチームの応援ソング書き下ろし、企業オリジナルソングの制作、アーティストへの楽曲提供、ラジオパーソナリティなど多分野で活動中