リバーブとは?
リバーブを日本語訳すると「残響」であり、リバーブとは空間の残響を再現したエフェクトです。
では、残響とはどのようなものでしょうか。
音は私たちの耳に届くまでに、発音体から耳に到達するまでにどこにも反射しない音と、壁などに反射してから届く音があります。
どこにも反射せずに届く音を「直接音」、1回のみ反射してから耳に届く音を「初期反射音」、2回以上反射してから耳に届く音を「後部残響音」といいます。
この時、反射の回数が多いほど耳に到達するのに距離ができるため、直接音と時間差で耳に届きます。この現象を残響というのです。
リバーブは、これらの残響音を再現し、空間の広がりや深みを感じさせる効果を持ちます。
このような空間を再現するエフェクトを「空間系エフェクト」と呼び、リバーブ以外にはディレイなどがあります。
リバーブの必要性と歴史
リバーブはなぜ必要なのか
自然界において、残響がない空間はありません。私たちが普段耳にしている音は、何らかの物体に反射した音が混ざっているのです。
そのため、無意識的に音の響きで空間を把握しており、音があまり響かないと音が近くに聞こえたり、響きが多いと広い空間にいるような錯覚を起こします。
リバーブを付加するという考えは、空間の演出に繋がり、音楽の創造を広げることに繋がるのです。
長い音楽の歴史の中で、音楽が演奏されるコンサートホールや教会でも、その響きは重要視されてきました。
人工的なリバーブの登場
録音の技術が発達してくると、残響音を人工的に付加しようという動きが1900年代前半から始まります。
初めに行われたのは、エコーチェンバーと呼ばれる手法です。
これは、音が反響しやすい部屋にレコーディング後の音源を流し、その空間で反響させた音を再度マイクで録音するという手法でした。
以下は、初めてエコーチェンバーという手法を使用して録音されたとされる曲です。バスルームをエコーチェンバー代わりに使用して、響きを付加しています。
その後、電気を利用してリバーブ成分を作り出す手法が登場し始めます。
1957年には鉄板と電気を利用してリバーブを得るプレートリバーブが登場。プレートリバーブの元祖となる EMT 140 が開発されました。この EMT 140 は後に Abbey Road Studios(アビー・ロード・スタジオ)にも導入されています。
EMT 140について原理を詳しく知りたい方は、こちらの動画をご覧ください。
また、ほぼ同時期に、バネを利用してリバーブを得る、スプリングリバーブが世に広まります。このスプリングリバーブの原理はほとんどプレートリバーブと同じで、鉄板をバネに差し替えたものでした。
以下はスプリングリバーブをデモンストレーションした動画です。スプリングリバーブのイメージがつきやすいと思います。
これらの電気を利用したリバーブは、エコーチェンバーで部屋の反射に一存していたリバーブ効果をコントロールする補佐の役割も果たしました。
その後、デジタル技術が発展し、デジタルリバーブが普及し始めます。
これまで物理的な現象を利用してリバーブが生成されていましたが、デジタルリバーブではその情報をシュミレートして、リバーブを再現しました。
初期のデジタルリバーブで有名なものとして、1978年発売の Lexicon 224 があげられます。こちらは今でも多くの音楽スタジオに置いてあるので、見かたことがある方もいるのではないでしょうか。
その後、DTM が普及し始めたことをきっかけに、ソフトウェアでのリバーブ開発が進みました。そして今日のように、実機がなくても様々なリバーブの効果をパソコン上で得られるようになったのです。
リバーブの種類
近年ではリバーブの手法をシュミレートしたソフトウェア・プラグインを用いることが主流です。そのため、この章でご紹介するのは、ソフトウェア・プラグインにおけるリバーブの主な種類をご紹介致します。
ホールリバーブ(Hall Reverb)
ホールリバーブとは、コンサートホールのような広い空間で得られる響きを再現したリバーブです。
広い空間は音が反響してから耳に聞こえるまでの時間が長いことから、残響時間が長い特徴があります。そのため、ホールリバーブではリッチなサウンドが実現できます。
様々な楽器に使用できますが、オーケストラや楽器など、壮大な演出をしたい場合に有効です。
ルームリバーブ(Room Reverb)
ルームリバーブとは、部屋で得られる響きを再現したリバーブです。
ホールリバーブよりも小さな空間を想定しており、短い残響時間です。そのため、より自然で、身近な残響音を得ることができます。
ルームリバーブはその扱いやすさから、様々な楽器に使用され、自然な空間演出をしてくれます。
ストリングスやピアノ、アコースティック楽器をはじめとした様々な楽器に適しています。
チェンバーリバーブ(Chamber Reverb)
チェンバーリバーブとは、エコーチェンバーを再現したリバーブです。
エコーチェンバーとは、1960年代に、リバーブをレコーディング後に付加する方法として、使用されていた手法です。これは、反響を十分確保できる部屋に、レコーディング素材を流しその部屋で反響した音を再度マイクに収音するというものです。
ボーカル、ギター、ストリングス、ドラムなど、様々な楽器に使用されます。
プレートリバーブ(Plate Reverb)
プレートリバーブとは、金属板(プレート)を振動させ、その振動によって反響音を作り出すといった手法を用いたリバーブです。
高い周波数域の方が良く響くため、曲に煌めく要素を追加することが可能です。
ボーカルやストリングス、ギターなどの目立たせたい楽器、またドラムなどにも頻繁に使用されます。
スプリングリバーブ(Spring Reverb)
スプリングリバーブとは、スプリング(=バネ)を振動させ、反響音を作り出す手法を用いたリバーブです。
発生方法はプレートリバーブとよく似ていますが、音の特徴は大きく違います。
スプリングリバーブは自然な響きというよりは、特徴的な響きです。プレートリバーブよりも高音域の伸びは少なく、独特の金属による音「ビョン」というような音が追加され、インパクトのある音、またビンテージ感のあるサウンドを演出することができます。
スプリングリバーブは、1960年代にフェンダー社のアンプに内蔵されたことをきっかけに、今日でもギターアンプに搭載されているリバーブの多くはスプリングリバーブを採用しています。
また、スプリングリバーブは、60年代のサーフロックで多く取り入れられました。
以下は、スプリングリバーブを使用した曲の例です。ギターに独特な響きが加わっています。
リバーブのパラメーター
リバーブのプラグインでは、様々なパラメータを設定することが可能です。
以下にプラグインで設定可能な一般的なパラメータをご紹介致します。
ルームサイズ(Room size)
ルームサイズは、音を反響させる空間の大きさを設定できる項目です。値を大きくするほど、より反響は多く、さらに残響時間が長くなります。そのため、わんわんと空間に響いているような印象になります。
反対に値が小さいと反響も残響も少なくなります。
プリディレイ(Pre delay)
プレディレイは、原音が鳴ってから初期反射が鳴るまでの時間を設定できる項目です。
プレディレイの値を大きくすると、直接音と初期反射を分けて聞くこともできます。そのため、プリディレイと次の項目であるアーリーリフレクションの値を大きくしたら、反響音というよりは音符が増えたような印象になります。
また、プリディレイの値を小さくすると、小さな空間で鳴っているような、自然な響きになります。
アーリーリフレクション(Early reflection)
アーリーリフレクションとは、初期反射の音量を設定できる項目です。
アーリーリフレクションは、略称の ER と記載されていることもあります。
音は距離があるほど音量が減衰するので、アーリーリフレクションの値を大きくすると、狭い空間の中で跳ね返ってきた音のように感じます。
反対に、値を小さくすると広い空間の演出できます。
ディケイタイム(Decay time)
ディケイタイムとは、後部反射音の長さを設定できる項目で、残響音をどれくらい残すかを設定できます。
広い空間ほど音が反射し、残響が消えるまでに時間がかかります。そのため、ディケイタイムを長くすることで、広い空間で鳴っているような印象にすることが可能です。
ディケイタイムは長過ぎると音が濁りがちなので注意です。
ディケイタイムは、製品によってはリバーブタイム(Reverb Time)とも呼ばれます。
デンシティ(Density)
デンシティとは、残響音の密度を設定できる項目です。
値が大きいほど、より多くの残響音を含み、滑らかで豊かな印象を与えます。
ダンピング(Damping)
ダンピングとは、音が鳴る空間の材質によって変化する音の減衰速度を調節できる項目です。
例えば、材質が硬い部屋は反射しやすく、残響の音量が減衰するまでに時間がかかります。一方、柔らかい素材でできた部屋は音を吸音しやすく、残響の音量も早く減衰することになります。
ディフュージョン(Diffusion)
ディフュージョンとは、リバーブの反射音の密度や拡散度合いを調整する項目です。値が大きいほど、反射音が散らばり、その分密度が少なくなります。
ウェット/ドライ(Wet / Dry)
Wet はリバーブ、Dry はリバーブのかかっていない原音のことです。
Wet / Dry とは、原音とリバーブ成分をどれくらいの割合で出力するか設定できる項目です。
Wet0% Dry 100%とすると、原音のみの状態、Wet 100% Dry 0%とすると、リバーブ成分のみの状態となります。
ディレイとの違いは?
リバーブとよく混合されがちなのが、ディレイというエフェクトです。
ディレイを日本語訳すると「遅延」という意味を持ちます。
ディレイはその名の通り、音を遅延させて繰り返すエフェクトです。これは、やまびこのイメージに近いでしょう。
やまびこも音が反射して返ってきた音という点では、リバーブと似ていますよね。
明確な違いは、原音と区別できるかどうかです。
おすすめのリバーブプラグイン
DAW 標準搭載のリバーブ
フリーのリバーブプラグインを探している方へ。
主な DAW にはリバーブプラグインが標準搭載されています。
Logic pro なら ChromaVerb や Space Designer、Cubase であれば Room works など。
初めはそのようなものから使い方を試してみると良いでしょう。
Valhalla VintageVerb(バルハラ・ヴィンテージ・バーブ )
Valhalla DSP 社の代表的なプラグインの一つともいえる Valhalla VintageVerb。
こちらのプラグインは、プレートリバーブやチェンバーリバーブをはじめとした22種類のリバーブモードを搭載しており、様々なリバーブ感を得ることができます。
また、お値段も 50USD とのことで、比較的手に入りやすい値段ということもあり、リバーブの定番品です。
こちらのプラグインは、以前 ONLIVE Studio blog でインタビューさせていただいた、ベテランエンジニアの渡辺省二郎さんもご使用されていました。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
以上、今回はリバーブについて詳しくご紹介致しました。
リバーブは音楽制作において欠かせないエフェクトで、楽曲に空間の広がりや深みを加える重要な役割を果たします。
リバーブの基本原理、また様々な種類を理解することで、自分が表現したい音に辿りつく近道となるでしょう。
ぜひ、この記事を参考にして、自分の目的に合ったリバーブを選び、音楽制作に活用してみてください。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。