ホームレコーディングとスタジオレコーディングについて
ホームレコーディングとは
ホームレコーディング(通称:宅録)とは、レコーディングに必要な機材を自分で揃え、自宅でレコーディングを行うことです。
スタジオレコーディング
スタジオレコーディングとは、音楽制作のために専用のレコーディングスタジオを利用して、楽曲のレコーディングを行うことです。
スタジオを借りて自分たちでレコーディングを進める場合もありますが、一般的にはプロフェッショナルなスタッフやエンジニアがアーティストをサポートしながら勧めていきます。
ホームレコーディングとスタジオレコーディングの違い
録音環境の違い
一つ目の違いは、録音環境の違いです。
レコーディングスタジオは、レコーディングすることを想定して録音環境に適した設計がされています。外部への音漏れの配慮、音響を考慮した部屋の形や材質、時には立地など。適切な音場(音が響き渡る空間のこと)のために、様々な計算が緻密に行われて作られています。
このように、徹底して音への配慮が行われているのはレコーディングスタジオならではです。
ホームレコーディングの場合でも吸音や防音を施し、より録音環境に適した部屋づくりを行うことも可能ですが、質の高いレコーディングスタジオのクオリティと同レベルのものを追求するのはなかなか難しいです。
一から録音環境のためにオーダーメイドで設計し、機材も高いものが購入できる場合は話が別ですが、一般的な居住環境の場合で、特に賃貸で広さがない家だと、冷蔵庫や換気扇などの環境音、部屋の反射音、また外を走る車の音などにレコーディングを邪魔される場合があります。
使用する機材の違い
レコーディングスタジオでは一般的には手が出しづらい価格帯の高品質な機材が備わっていることが多いです。
スタジオによって常設の機材は異なるため、自分が求めるサウンドが実現できる機材を考慮してスタジオ選びをする必要があります。
一方ホームレコーディングでは、コンピューター、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)、マイク、ヘッドフォン、スピーカーなどといったレコーディングに必要な機材を自分で選択して用意をすることが一般的です。
人的要因の違い
前述の通り、スタジオレコーディングでは、エンジニアのサポートを受けてレコーディングを進めることができます。
エンジニアが機材の位置やボリューム設定など、音質について細かな調整をしてくれるため高品質なレコーディングが可能です。
スタジオによっては、エンジニアをつけるのは別途料金がかかる場合があります。
また、エンジニアとの相性や、エンジニアの技量は人によって異なります。あらかじめレビューなどを確認しておきましょう。
エンジニアに依頼する際は、事前に担当のエンジニアとミーティングでしっかりと伝えないと求めるサウンドの方向性がずれていってしまう可能性があるので注意です。
中にはスタジオだけ借りて、エンジニアはいつも外注している信頼できる人にお願いしているというアーティストもいます。
当サービスの ONLIVE Studio にも、経験豊富なエンジニアが登録されています。
自分に合ったエンジニアを探したいという方は、ぜひご活用ください。
一方ホームレコーディングの場合、全て自分で行う必要があるため、自分が求めるサウンドを追及できるという利点はありますが、マイクのセッティングや録音品質に関しては個人的に勉強が必要となります。
手軽さの違い
ホームレコーディングの場合は自宅で手軽にレコーディングが可能です。レコーディングスタジオを使用する場合は、スタジオ選び、事前ミーティング、プリプロ、などやるべきことがたくさんあり、費用もかかります。
また、レコーディングスタジオでのレコーディングの場合は、ミスが後日に発覚したり、後に変更したい部分が発生した場合、再度スタジオを予約する必要があります。そのため、取り直しを避けるためにレコーディングを行う前にしっかりと楽曲の方向性を固め、当日はしっかりとチェックをすることが重要です。
一方、ホームレコーディングだとそのような場合でも、手早く録り直すことができます。
コストの違い
当然ですが、レコーディングスタジオを利用した場合は費用がかかります。
スタジオによって料金設定は1時間あたり4000円程度〜30000円以上のものまで、価格帯は様々です。
時間の制約
レコーディングスタジオでのレコーディングは、限られた時間の中でレコーディングを行います。そのため、当日に無駄なことで時間を裂かないためにも、事前に決めておけることは決めておくことが大事です。
また、当日のレコーディングを段取りよく進められるように、本番のレコーディングを想定するプリプロといった工程も行われる場合があります。
ホームレコーディングの場合は時間の制約が特にないので時間を気にせずレコーディングをすることができます。
ホームレコーディングとスタジオレコーディングの使い分け
ここまでホームレコーディングとスタジオレコーディングの違いを見てきました。
冒頭でもお話ししたとおり、近年ではデジタルの進歩や情報の流通により、自宅でも高品質なレコーディングが可能になりました。また、スタジオの質もピンキリのため、音響環境に配慮されていなかったり、メンテナンスをされていないスタジオを使用するくらいならコストをかけて借りる必要はないとも言えます。
そのため、一概にどちらが良いという訳ではなく、利用目的を明確にし、状況や欲しいサウンドに応じて上手く使い分けることで、より効率的に音楽制作を行うことができます。
以下は、それぞれの主な利用目的です。
<スタジオレコーディング>
- 大きな音を出す収音を行いたい場合
- ノイズをできるだけ抑えた高品質な録音を行いたい場合
- スタジオに備え付けの機材を使用したい場合
- バンド一発録りや弦楽器の録音などを行いたい場合
<ホームレコーディング>
- 時間を気にせずレコーディングをしたい場合
- 試し録りを繰り返してサウンドやフレーズのアイデアを固めたい場合
- 自宅で作業を完結させたい場合
近年ではメジャーアーティストの現場でも、スタジオレコーディングとホームレコーディングを併用して音楽制作を進めていくことは一般的になりました。ホームレコーディングをプリプロのような役割で使用し、スタジオレコーディングでは実現したい音を得るために行う、などのような使い分けをしている場合が多いです。
まとめ
いかがでしたか?今回はホームレコーディングとスタジオレコーディングの違いについてお話ししました。
近年ではホームレコーディングがアーティストの中でも一般的になり、自宅の制作から日の目を浴びたアーティストがたくさんいます。
例えば、ビリーアイリッシュ( Billie Eilish )のファーストアルバム『 When We All Fall Asleep, Where Do We Go? 』は自宅の寝室でビリーと、彼女の実の兄であるフィニアス( Finneas )と制作したものであり、使用機材もそこまで高額なものではなかったにも関わらず、2020年度のグラミー賞で年間最優秀アルバム賞を受賞しました。
このように自宅での自主制作に取り組むアーティストが近年増えていることを背景に、ベッドルームポップ(主に個人の寝室で制作された音楽を指す)などという言葉も作られたりと、ホームレコーディングの一般化は様々なクリエイターの輩出に貢献しています。
東京出身の音楽クリエイター。 幼少期から音楽に触れ、高校時代ではボーカルを始める。その後弾き語りやバンドなど音楽活動を続けるうちに、自然の流れで楽曲制作をするように。 多様な音楽スタイルを聴くのが好きで、ジャンルレスな音楽感覚が強み。 現在は、ボーカル、DTM講師の傍ら音楽制作を行なっている。 今後、音楽制作やボーカルの依頼を増やし、さらに活動の幅を広げることを目指している。
Masato Tashiro
プロフェッショナルとして音楽業界に20年のキャリアを持ち、ライブハウスの店長経験を経て、 2004年にavexに転職。以降、マネージャーとして、アーティストに関わる様々なプロフェッショナルとの業務をこなし、 音楽/映像/ライブ/イベントなどの企画制作、マーケティング戦略など、 音楽業界における様々な制作プロセスに精通している。 現在はコンサルタントとして様々なプロジェクトのサポートを行っている。